怪談が沢山!金沢・加賀すき!
石川県金沢市にある泉鏡花記念館、室生犀星記念館。
「高野聖」や「童子」をはじめとする同郷の文豪おふたりの作品が元々好きなのですが、金沢はそんなに怪談話が多いのか?と研究したことがありました。
今回は実際に記念館を訪れてその謎を紐解いてみます!
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歴史ある加賀百万石、金沢藩
金沢といえば観光地としても有名で、古くから歴史ある街です。
金沢藩は江戸幕府より百万石の領地をあずかり、前田氏がおさめ、その藩財政が非常に理にかなっていることから賢い人々として知られています。
手工芸品や金箔などご当地名産品を作ることに藩で取り組んだのです。
そこらへんの有名な歴史は皆さんの方がご存知かと思いますので説明は省きますがとにかく…
金沢って本当にいいところ!
古い建物もモダンに溶け込んでお洒落になっちゃうのが金沢…!
金沢城下町には怪談が多い
金沢城下町なのですが今では公園となっています。
この公園周辺や、金沢城があった周囲の通り(百万石通りなど)は不思議な逸話が多いことは、怪談フリークには有名な話です。
調べてみると江戸時代頃から武士たちによる「怪談遊び」(百物語のルーツのようです)が盛んで、多くの文豪が怪談をテーマにした話を書いています。
そんな不思議な話の多くは皿屋敷のように「ひとり(一枚)足りない…」という定番の人霊や、カワウソや猫・狐などの動物が化けて出てくる話など様々です。
実際に私が面白いと感じたお話をご紹介しましょう。
月夜遊女
「私を一所に連れておいで。」
月夜、大きな鮟鱇を運んでいた吉と音吉の二人。
なぜか鮟鱇の肝は、美女に化けてしまう。(Google booksより)
高野聖
飛騨から信濃へ、峠道をたどる旅の僧が、山中の一軒家で一夜の宿を乞う。
その家には美しい女と、その亭主が住んでいた。
近くの流れに案内された僧は、女に体を洗われ、花びらに包まれたような気分になる。
その夜、僧のまわりを無数の獣の気配がとりかこむが…。
表題作『高野聖』など妖しく美しい幻想の世界を描いた5篇を収録。(Google booksより)
室生犀星集 童子
金魚の少女と「をぢさま」の妖美な交歓を描いた名作「蜜のあはれ」で、新世代の読者を瞠目せしめた室生犀星の文学には、森茉莉をはじめとする熱烈な信奉者も数多い。
早世した愛児との死後の交流を哀切に描いた一連の幽霊譚、故郷金沢の天狗や水妖の話、モダン都市浅草の闇に明滅する電気娘の妖異など、不世出の詩人作家・犀星が遺した怪異譚の傑作を集大成。全集未収録・初文庫化作品を満載。(Google booksより)
金沢出身の文豪が多い
ご紹介した本の著者は全て金沢市出身の文豪です。
彼らの他にもまだまだ有名な文豪がおります。
江戸時代から武士が階段を語り継いでいたように、物語を綴ることが日常的な文化になっているのだろうか?
せっかくなので記念館にもお邪魔してきました。
泉鏡花記念館
泉鏡花のあやしい世界観、そして美しいことば…
記念館を訪れるだけでその世界に魅了されます。
室生犀星記念館
室生犀星は詩人として有名ですが、怪談話も書いています。
館内には、動物好きと知られている室生犀星の愛猫といろりを囲む有名な写真も飾られています。
猫好きというだけで室生さんが可愛く見えてしまう不思議…
なぜ金沢には怪談が多いのか?
江戸時代から武士たちのあいだで怪談遊びが流行ったとのことですが、これはなぜでしょうか。
火のないところに煙は立たず…ということであくまでも私的仮説ではありますが調べてみました。
北国街道周りが遠い道のり
武士→江戸時代と言えば参勤交代ですが、金沢から江戸まではかなり遠い道のりです。
甲州街道で下諏訪まで出てから北国街道を回り込む…これが右なら越後、左なら琵琶湖まで行ってから金沢まで回り込むことになります。
「月夜遊女」でも主人公がアンコウをかついで横浜まで行くと言っていましたから、それは大変だったことでしょう。
それにしても下諏訪から一直線に金沢まで行けないものか。
地図帳を見てみるとなるほど、槍ヶ岳や飛騨があるではないか!
ここを避けて街道ができたようですが、飛騨と言えばこれまた不思議な話の宝庫です。
現在の地名で言えば岐阜県にあたります。
近道だとしてこの奥深い山脈を越えたのなら、夜道に何かに遭遇しても不思議ではありません。
地図帳を凝視していると気になるルートが…
江戸から金沢まで行くならこのルートは近道だぞ…
飛騨高山街道
飛騨高山で有名な話と言えば、山の妖怪サトリでしょう。
サトリは猿に似た妖怪で人の心を読むとされますが、実はその正体は、奥深い山道で考え事をしながら歩いている自分の声が誰かと会話しているように聞こえたり、実際独り言を言いながら歩いていたのが反響したりすると言われます。
現代よりも山道は真っ暗で静かでしょうから、怖がりの人はそうして紛らわしたのかもしれません。
またサトリは中国の妖怪のヤマコとする説があり、後に柳田國男が山彦とも言っています。
あとは両面宿儺(りょうめんすくな)の話も有名でしょうか。
日本書紀では凶賊ですが、飛騨ではヒーローという男の伝承がこの街道の各地に存在します。
飛騨の一宮である水無神社も興味深いですね。
下諏訪の諏訪大社、守屋、飛騨の水無、位山。うーん。
(余談ですが島崎藤村・父が宮司をやっていたそうで)
中央構造線を越える
中央構造線はジバゼロと言ってコンパスが効かない場所。
もし江戸まで行くとしたらどこかで中央構造線を越えることになります。
また所要な神社やお寺、川沿いで鉱物が沢山採れたりするようなところなのでエネルギー的にも強い場所だと思います。
実際甲州街道では下諏訪まで行きますから、中央構造線上にある諏訪大社も訪れることでしょう。
そんな場所で何かしらが起こっても不思議ではありませんね。
都市伝説と化している
正直これが一番有力なのですが…
私の出生地である山形もそうですが、山に囲まれた田舎(金沢は田舎ではないと思いますが)では、土着の風習・伝承・逸話が生まれやすい傾向にあります。
日本各地にその土地の妖怪話や怪談話がありますが、現代では七不思議のように都市伝説と化している場合もあります。
またその多くが子供のしつけや、人間の欲望を戒めるための教訓的な話だったりします。
特に加賀の人々は賢い人が多かったでしょうから、そのように怪談を遊び(百物語)として取り入れ教訓にしていたのかもしれません。
そしてそれが仮に霊などの目に見えないものの仕業でないとしても、自然に囲まれた土地ではまるでそれらがいるように思えるものです。
(もちろん本当にいるのかも…と私は思っています。)
自然への畏怖の心を育てながら教訓にするとは、なんてイイハナシ…
って終わりたいところですが、この加賀については今後も研究をしていきます。
このレポートは途中経過ということで。
こんな話があるよ!説があるよ!と知っている人がいたらぜひコメントで教えてくださいね。